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お金の情報・まめ知識 2025/8/1

LDCレポート【8月号】

■ 「ノンアル」にイエスを! 各社、“積極的ノンアル党”獲得に、熱い闘い。

 若者を中心に“酒離れ”が進むにつれ、需要が拡大し活況を呈しているのが「ノンアルコール飲料(アルコール度数0.00%)」の市場。ビールだけでなく、ワイン、ハイボール、チューハイから梅酒、日本酒と、多様なジャンルの“酔わないお酒”を各社、競って開発。

 ノンアル飲料に対する消費者のニーズは、明らかに変化してきています。かつては、運転・仕事・体調などでお酒を飲めない状況の時の“代替品”として、仕方なく選ぶ消極的な飲み物でしたが、今は健康や味や機能性から、積極的に選ばれる嗜好飲料へと変貌。背景には、各社、開発競争により、味わいが年を追って改善され品質が飛躍的に向上したこと。さらに“カロリーゼロ”“糖質ゼロ”などの機能性ノンアルが続々と登場。また、健康志向の高まりから、“適正飲酒”のトレンドが広がり、“ソバーキュリアス”(「しらふ」と「好奇心が強い」を合わせた造語)といった、“飲めるけど、あえてお酒を飲まない”ライフスタイルが世界的に波及していること。加えて、2026年に控える酒税改正の影響も挙げられます。チューハイなどが増税となる一方、アルコール度数が1%に満たないノンアル飲料は、酒税改正の対象外。利益率が高く貴重な収益源へと成長したノンアル飲料にとっては、格好の追い風となるはず。

 [アサヒ]では、飲める人も飲めない人も一体で楽しめる文化の醸成を目指し、“スマートドリンキング(略して、スマドリ)”を提唱。東京・渋谷にノンアルの「スマドリバー」をオープンし、今年は100億円を投じて、名古屋・大阪・福岡・韓国でも、スマドリバーを期間限定で開く予定。

 2025年、ノンアル関連のマーケティングに50億円(昨年比3割増)を投じる[サントリー]は、今年1月、“ノンアル部”を新設。4月からは、全国の駅や街頭で延べ100万人規模のゲリラサンプリングを実施しています。

 国内勢のアサヒ、サントリーのノンアル2強に闘いを挑むのは、世界トップのオランダビール大手[ハイネケン]。世界で最も飲まれているノンアルビール「ハイネケン0・0(ゼロゼロ)」(330ml缶/税別145円)で、2023年、日本市場に参入。1年後には早くも同社全体の売上高の1割を占めるほどの勢いです。

 他業種からの参入も話題に。2022年、スポーツ用品大手の[ミズノ]からノンアルビールが発売されました。もちろん、創業以来、初となる快挙(?)でした。その名も、「PUHAAH(プハー)」(330ml×6本セット/税別2945円) 。クラフトビールメーカーの[南信州ビール]との共同開発から生まれ、昨年度売り上げは、2023年比で7割増と好調。

 味がおいしくなった、種類が増えたと、消費量が増えて盛り上がっているノンアル飲料ですが、それでもまだ酒類と飲料を合わせた市場のわずか1%にも満たない規模。国内の成人人口約9000万人のうち、日常的にお酒を飲む層は4000万人と推計。残りの5000万人は、普段から“飲まない・飲めない”人。この酒類ビジネスの空白だった5000万の人に、“ノンアルはお酒の延長線にある飲み物ではないこと”、そして“ノンアルはお酒を飲む人のものだけではないこと”を広め、お酒でも清涼飲料水でもない“第3の選択肢”としての価値を高めることができるか-----そこが、さらなるノンアル普及へのカギになりそうです。

※参考:

アサヒグループ        https://www.asahigroup-holdings.com/

サントリー           https://www.suntory.co.jp/

ハイネケン・ジャパン    https://www.heineken.com/jp/

ミズノ              https://corp.mizuno.com/jp/

日経МJ(2025年4月20日付/同4月23日付)

 

■開発進む、卵を使わない「まるで卵」食品。

 [JA全農たまご]によると、2024年10月から翌25年2月にかけて猛威をふるった鳥インフルの影響で、2025年の鶏卵生産量は24年比約6%減となる見通し。近年は“エッグショック”と呼ばれた2023年を筆頭に価格の乱高下が常態化。鶏卵の供給不安に伴う価格高騰が続く中、食品メーカー各社は、卵を使わない商品の開発に本腰を入れ始めています。

 最近、よく目にするのが“代替卵”という言葉。植物性の原料を用いて鶏卵の食感や風味、見た目などを再現した代替フードのこと。読み方は、言葉遊びのようですが、“だいたいたまご”と読みます。もともとは、卵アレルギーの人や食事制限をしている人をはじめ、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)の人に向けて作られていたものが、次第に一般の人向けへと広がっていきました。

 [2foods(ツゥーフーズ)](東京)から発売された代替卵食品は、ニンジンと白インゲン豆を原料に生まれた、「Ever Egg(エバーエッグ)」。[カゴメ]とのコラボで、“野菜半熟化製法”という新たな技術を開発。コレステロールゼロで、加熱しても固まらず、まるで本物の卵のような味やふわとろ食感を実現。価格は、常温タイプ130gで380円、冷凍タイプ500gで1600円(共に税別)。

 [キユーピー]からは、豆乳加工品をベースに植物由来の原材料から生まれた冷凍食品、「HOBOTAMA(ほぼたま)スクランブルエッグ」(税別204円)。卵を使わずに、シェフが手作りしたような半熟感が再現されています。

 卵未使用なのに堂々と「かきたま風スープ」と命名されたのは、[東洋水産]から昨秋発売された“素材のチカラ プラントベース”シリーズの一品(税別150円)。

 スタートアップも代替卵食品に注目し、独自の開発に取り組んでいます。

 2022年創業の[UMAMI UNITED JAPAN](東京)は、[ケンコーマヨネーズ](東京)との共同開発で「まるでたまごのサラダ」(500g/税別1300円)を発売。豆乳・アーモンド・コンニャクをベースに、うま味成分としてキクラゲに独自の酵素処理を施すことで卵のコクや風味を再現した粉末素材を開発(業務用)。オムレツやスクランブルエッグなどを簡単に作ることができるほか、焼き菓子などの製菓材料としても利用できます。

 発酵食品開発メーカーの[オリゼ](東京)は、国産米麹(こうじ)と豆乳で作った植物性発酵マヨネーズ「麹マヨ」(180g/税別800円)を昨秋発売。豆乳特有の匂いを抑えつつ、麹のうま味を生かし、コクのある味わいに。カロリーも脂質も、一般的なマヨネーズの6割程度に抑え、おいしさとヘルシーを両立しました。

 今は、鶏卵の供給不足も手伝ってニーズが高まっている「代替卵」ですが、安定供給となった時にも、卵にとって代わる選択肢として食卓に上がることができるか。今後の成長が注目されます。

※参考:

JA全農たまご        https://www.jz-tamago.co.jp/

2foods             http://2foods.jp/

キユーピー          https://www.kewpie.co.jp/

東洋水産           https://www.maruchan.co.jp/

UMAMI UNITED JAPAN  https://jp.umamiunited.com/

オリゼ             https://www.oryzae.site/ 日経МJ(2025年4月20日付)

 

■空路、陸路、フェリーに次ぐ“速くて安いアシ”、「超高速船」。

 国内の近海に点在する島しょ間を結ぶ航路は、厳しい海象条件のため大型の貨客船しか就航できず、東京からは多くの時間をかけないと行き来できない状況でした。そこに登場したのが、通常の旅客船よりも速い「超高速船(ジェットフォイル)」です。

 一般的に、旅客船で35ノット(時速約65km)以上で航行する船を“超高速船”と呼ばれています。ジェットフォイルは米国の航空機メーカーによって開発され、ウォータージェット推進機から、毎秒3トンの海水を後方に噴射しながら前進。最高時速80kmのハイスピードを実現した、まさに“海のジェット機”です。さらに、“自動姿勢制御装置”を搭載しているため、波の影響を最小限に食い止め、船酔いの心配も解消。

 超高速船は現在、一定の人口を有する島と本州や九州との往来に活躍しています。[東海汽船]の東京・竹芝⇔下田港間の航路は、片道2時間10分で料金が大人7500円。鉄路なら3~4時間、車なら早くて3時間前後、渋滞にはまると5時間を超すことも。

 11月に超高速船航路を開設予定の[久米島オーシャンジェット]の航路は、那覇⇔久米島間。フェリーで片道3時間超かかっていた移動が1時間ほどに短縮され、日帰りでの観光が、より現実的なものになりました。料金は、大人・片道で7000円程度を想定。この区間には片道30~40分で結ぶ空路もありますが、料金は1万円以上。オンシーズンには1万5000円を超えることも。キャパも、空路では1便あたり100席弱のところ、船は約230席。現地の関係者は、インバウンドや修学旅行などの団体客需要を見込んでいます。

 [九州郵船]の博多⇔対馬間は、直線距離で約120km。超高速船で3時間前後を要し、料金は片道9800円。一方、フェリーを利用すると、約5時間と、時間はかかりますが料金は5700円と割安。このように、“フェリーより速く、飛行機より安い”のが売りの超高速船ですが、対フェリーで見ると、航路によっては料金が割高になってしまうというケースも。

 そのほか、新潟⇔佐渡(佐渡汽船)、長崎⇔五島(九州商船)、鹿児島・指宿⇔種子島・屋久島(種子屋久高速船)、境港⇔隠岐(隠岐汽船)など、超高速船の航路は増えています。

超高速船の特徴として、極端に短距離の移動ではこの船の利点を発揮しにくく、かといって長距離すぎると飛行機のメリットが上回るという、微妙な航路設定が求められます。

 近ごろの訪日観光客は、リピーターも増え、都市圏の人気観光地だけでなく、全国津々浦々、日本人もあまり足を運ばないような場所を“発掘”して出かけるようになってきています。他の交通サービスと連携しながら、超高速船を活用した日帰り観光の需要増に期待はふくらみます。

※参考:

東海汽船            https://www.tokaikisen.co.jp/

久米島オーシャンジェット  https://ko-jet.com/

九州郵船            https://www.kyu-you.co.jp/

日経МJ(2025年4月16日付)