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お金の情報・まめ知識 2023/10/1

LDCレポート【10月号】

■コロナを機に需要増。自宅に、ちょっとした“個”空間、その名は「ヌック」。

 これまで、リビングやダイニングキッチンといった家族の共有スペースは、開放感をコンセプトに設計されてきました。しかし、昨今、家族と過ごす“おうち時間”が増えてくると、共有空間の使い方に、よりメリハリを求める欲求が強くなってきました。その一つが、あえて“開放”とは真逆の“こもる”機能を持たせた空間です。それが、スコットランド生まれの「ヌック」と呼ばれる、こぢんまりして居心地の良いおこもり空間です。スコットランドの石造住宅の暖炉のそばに設けられた腰掛け「イングル・ヌーク」、つまり部屋の片隅にある暖かくて心地の良い小さな場所という意味合いの建築用語が語源といわれています。

 形状や大きさ、場所、使いみちなどに決まりはありません。個室のようにドアや壁でがっちりと仕切るのではなく、簡単な入口を設けたり、段差をつけたり、床材で他の空間と違いを出したりなど、ゆるやかに区切るのがヌックのコツ。お部屋未満の半個室空間なので、家族みんなでフレキシブルに使うことができます。

 例えば、リビングの一角にヌックがあれば、家族がテレビを見ている時、ヌックの中で本を読んだり、ゲームやパソコンをしたりと、完全に閉じられた個室ではないので、家族の姿や気配を感じながら自分の時間に集中することができます。切り離されて孤立している感覚と、つながっている感覚の両方が味わえる空間。ここがヌックの最大の特徴であり、魅力でもあります。

 デッドスペースになりがちな階段下は、ヌックには好立地。洞窟のようなおこもり感を演出できるので、リーディングヌックにしたりワークスペースや秘密基地風のキッズスペースにも。

 廊下の奥にはベンチやデスクを置いて読書や子どもの宿題スペースに。“通り過ぎる場所”から“過ごす場所”へと有効活用。

 ほかにも、窓辺の一角、キッチン、使われていないクローゼットなど、ヌックに適したちょっとした空間は家の中にネムっています。

 独立した部屋ほどの広さは必要ないけど、1人で落ち着ける“ちょうどいい狭さ”の空間が欲しい……最近は、単に“広さ”より“居心地の良さ”を求めるニーズが高まっており、注文住宅に「ヌック」を取り入れる人が増えています。外国では、自宅に子ども用のリーディングヌックを設け、小さいころから本に親しむ習慣を身につかせることに一役買っているとか。

 狭いスペースならではの居心地の良さを追求した「ヌック」。この小さな空間が、“おうち時間”の過ごし方が多様化したアフターコロナのライフスタイルに、大きな役割を果たすことになるのかもしれません。

 

■近ごろの赤ちゃんは、イベントが増えてお忙しいようです。

 誕生から初めての誕生日まで、赤ちゃんの成長に合わせてさまざまな行事が控えています。これまでは日本古来の伝統的行事が中心で、その数も限られていましたが、近年、欧米から流入した“外来ベビーイベント”が激増。その波は、関連のハンドメイド市場にまで及び、思わぬ需要拡大で活況を呈しています。

 出産前のマタニティーイベントとして日本でもじわじわ浸透してきているのが、「ジェンダーリビール」。Gender=性別、Reveal=明らかにする、という意味で、生まれてくる子どもの性別を書いたカードを、ケーキや風船に仕込んでお披露目するパーティーイベントです。

 生まれてくる赤ちゃんと妊婦さんをお祝いするための“安産祈願”パーティーが、「ベビーシャワー」。友人や家族が企画することもあれば、妊婦さん自身が幹事をするケースも。“抱っこ紐”や“おもちゃ”など、赤ちゃんや母親向けのプレゼントを持ち寄ります。

 生後7日以内の赤ちゃんを写真におさめることを「ニューボーンフォト」といいます。可愛いアイテムと一緒に、裸で撮影するのが流行りです。また、生後30日以降、毎月、1カ月ごとの成長を記録する「月齢フォト」も広まっています。何カ月目かがわかる数字のグッズと共に、同じ場所で撮るのがコツ。

 最近、特に人気なのが「ファーストカットアート」。自分で描いた赤ちゃんのイラストに、産まれて一度も切っていない髪の毛(胎毛)をカットし、ちょんまげ風に加えた“作品”を額縁に入れて飾るのがトレンド。カットした毛を筆に仕立てる「赤ちゃん筆」も一般的で、制作を依頼すると5000~2万円程度。

 赤ちゃんの初めての誕生日に、一生分の食べ物になぞらえた「一升餅」を赤ちゃんに背負わせてお祝いする行事は昔からありますが、最近は、お餅の代わりにパンを背負わせる「一升パン」が人気となっています。大手ベーカリーで扱う一升パンは、直径約37cm、重さ約1.8kg、価格は3000~5000円。

 同じく、1歳の誕生日に「スマッシュケーキ」というお祝いの仕方が注目されています。スマッシュ=強い力で打ち壊す、の意味の通り、ケーキを初めて見る赤ちゃんに、自由に手づかみでケーキを食べさせてあげるという斬新なお祝い方法。赤ちゃんは、汚れてもいい服か、上半身裸のオムツスタイルで。床にはあらかじめレジャーシートなどの準備を。

 日本になかった新たなベビーイベントが増えた背景には、SNSの普及があります。赤ちゃんを題材にした“映える”写真のインプットもアウトプットもしやすくなったことに加え、ネットショップや100円ショップでもベビーイベント関連グッズの品ぞろえが充実し、ママたちの参加へのハードルが下がったこと。さらに、そんなママたちの細かなリクエストに対応できるハンドメイド市場の盛り上がりも追い風に。例えば、手作り品売買サイトの[minne(ミンネ)]では、「一升餅」用の可愛いリュックに子どもの名前をあしらった商品がヒット。国内最大のハンドメイドマーケット[クリーマ]では、「お食い初め(おくいぞめ)」などで簡単に着せられる“ベビー袴”の販売数が、今年春の時点で過去最高を記録するなど。

 2022年の出生数が初めて80万人を割り込み、歴史的な少子化が進むなかにあっても、ベビー用品市場は、ほぼ横ばい。逆に赤ちゃん1人当たりの投資金額は増えており、イベントにもしっかりお金をかけているという力強い現実が下支えとなっています。

※参考:

赤ちゃん本舗         https://www.akachan.jp/

ミンネ              https://minne.com/

クリーマ             https://www.creema.co.jp/

日経МJ(2023年6月14日付)

日経МJ(2023年6月21日付) 

 

■ギター人気、再燃。コロナ下で、市場成長。

 “おうち時間”の増加がギター市場の需要を喚起し、復活の兆しを見せています。

ギター大手の[米フェンダー]社が2021年に行った調査によると、米国だけで1600万人以上、全世界では推定3000万人がコロナ下でギターを始めたといい、同社は2020年に過去最高の売り上げを達成。その売り上げ拡大に貢献した国の一つが日本で、2015年から2021年までの売り上げが2ケタ成長を続け、2023年の足元でも好調な伸びを示しています。日本国内では、2022年のギター販売額が約75億円と、コロナ禍前の2019年と比べて2割超の増加(経産省)。

 ヒップホップや電子楽器による打ち込みが主流の音楽シーンの中で、米国のギター大手[ギブソン]が2018年に経営破綻するなど、近年は逆風にさらされてきたギター市場ですが、今、明らかに風向きが変わり、新たな波が湧き起ころうとしています。

 そんな市場に、思わぬ助っ人が出現して、側面からの強力な後押しとなっています。昨秋、テレビ放送された「ぼっち・ざ・ろっく!」というアニメ作品です。ギターを愛する人見知りの少女が、バンド活動を通じて成長する姿が人気を博し、いつかギターやバンドをやってみたいという潜在的な需要を掘り起こしてギター人気に火をつけました。ちなみに、この作品に登場したのが、[ヤマハ]から30年ほど前に発売されたエレキギター「パシフィカ」で、放送後は前年比で3~4倍の売り上げがあり、放送の最終回直後、キャラクターが使用した特注のパシフィカをプレゼントすると告知したところ、約20万人もの応募があったという過熱ぶり。

 前述の、米国に本社を置く世界的ギターメーカー[フェンダー]が、今年6月、東京・原宿に世界初の旗艦店「FENDER FLAGSHIP TOKYO」をオープンして話題となりました。それは、同社にとって日本が大きな市場であると同時に、今後成長が見込まれるアジアの重要な拠点になると位置付けていることの証し。店内は、初心者からプロまで、あらゆるギター愛好家に合うラインナップで構成。最大の特徴は、実際に楽器に触れ、自由に試奏体験ができる体験型の店舗であるところ。好みのアンプを使って、ライブさながらの大音量でギターを試せる防音ルームやカスタムオーダーのサービスを提供してくれるフロアも。オープンを記念して、北斎の「富嶽三十六景」をボディにプリントした3種類の特別モデルのギターも発売されました。価格は、1本、税込33万円。

 その昔に起きた“バンドブーム”とも“DJブーム”とも色合いが違う、ギターを軸とした新しい音楽ムーブメントの前兆が今起きていて、その一つの象徴が、アジアの、TOKYOの、このメガストアの誕生なのかもしれません。

※参考:

フェンダーミュージック    https://www.fender.com/ja-JP/

経済産業省           https://www.meti.go.jp/

ヤマハ                https://jp.yamaha.com/

日経МJ(2023年6月19日付)