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お金の情報・まめ知識 2023/6/4

LDCレポート【6月号】

■“時”は金なり、“空間”も金なり。狭くなる我が家に、「スペパ」で対抗。

 お金の有効活用を考えて消費する「コスパ」(コストパフォーマンス=費用対効果)が“長男”なら、時間の有効活用を考えるのが“次男”の「タイパ」(タイムパフォーマンス=時間対効果)。そこに最近“三男坊”として、空間の有効活用を考える「スペパ」(スペースパフォーマンス=空間対効果)が話題となり、注目されています。共に、使えるお金や時間や空間が限られるなかで、より少ない投資からより多くの効果を求める、つまり効率の良さを重視するという点で“3兄弟”は共通しています。

 スペパが浸透してきた背景として、次の2点が考えられます。

 一つは、日本の住宅がじわじわと狭くなっていたこと。マンションの住宅面積が、10年前と比べ、1割ほど小さくなっていたのです(住宅金融支援機構/2021年調べ)。もう1点は、コロナ禍によるリモートワークの普及で、寝食が中心だった自宅に仕事場としての役割が加わったこと。

 スペパ実践のポイントは、一つのモノを複数の用途で使用することです。例えば、アウトドア用品は“いつか使うが、普段は使わないモノ”の代表格。これを“いつも使うモノ”状態にすることで自宅の収納スペースを節約できます。キャンプ用のダイニングテーブルやイス、ソファなどを家具として購入。一般の家具を買いそろえるより支出が抑えられ、スペパと同時にコスパもかなって一石二鳥。[コールマン]から今年発売された、空気を入れるだけで使うことができるソファ「エアカウチ」は、使用時には横幅160cmですが、空気を抜いてたたむと手軽に持ち運びできるサイズに。一人掛け1万8480円、二人掛け2万5850円。

 個性的な電動バイクメーカーの[ICOMA]が開発したのは、「タタメルバイク」という超小型電動バイク。全長1m23cm、全高1m。たたむと69cm角(厚み26cm)とスーツケースほどの大きさに変身し、机の下にもすっぽり。今春からの販売を目指しており、価格は40万円をめどに計画中。

 家電メーカーの[カドー]は、ドライヤーが1920年に発明されて以来、その不定形故に場所をとる形が100年経っても変わっていないことに疑問を抱き、収納しやすい直径約4cmのスティック状のヘアードライヤー「baton(バトン)」の製品化に成功。軽量(298g。一般的ドライヤーは約500g)でコンパクトながら、風量はパワフル。価格は2万9920円。

 空間の賢い使い方を考えること(スペパ)が、コスパやタイパ向上にもつながります。

特に、Z世代の若年層は、“かさばるモノが嫌い”“スペースをとらないモノを選びたい”といった価値観がネイティブに身に付いている傾向が強く、彼らの生活の中では、スペパとコスパとタイパがいい具合に連携しながら、三位一体となって共存しているようです。

※参考:

住宅金融支援機構      https://www.jhf.go.jp/

コールマン            https://www.coleman.co.jp/

ICOMA              https://www.icoma.co.jp/

 

■台数も、売り上げも、過去最高。コロナを追い風に快走する「キャンピングカー」。

 3密を回避できるアウトドアレジャー人気で脚光を浴びている「キャンピングカー」ブーム。『日本RV協会』によると、2022年のキャンピングカーの国内保有台数は、前年比6.6%増の14万5000台で過去最高を記録。4年前の3割増の伸びで、販売総額(新車+中古車)も前年比20%増の762億5000万円と、これも過去最高。車両購入価格のボリュームゾーンは、400~500万円。

 キャンピングカーの車両には多種多様なタイプがあります。人気のベスト3は---。

 ワンボックスのバンやワゴンをベースに、キッチン、サニタリー、就寝スペースなどを架装したもので、通称“バンコン”と呼ばれるタイプが一番人気(「コン」は「コンバージョン=変換」の略)。次いで、キャンピングカーの中でも王道の車種といわれる“キャブコン”タイプ。トラックなどの、キャブと呼ばれる運転席部分を残して、その後ろの部分に居住スペースを架装したもの。3位が、軽ワゴンの荷台をキャンピング仕様に改修した“軽キャンパー”。このほか、最近目立っているのが“キャンピングトレーラー”です。総数としてはまだ全体の1%ほどですが、伸び率が顕著。固定して利用できるため、災害時のシェルターや感染対策の隔離施設、プライベートな小屋としての利用も可能に。

 キャンピングカーをめぐっては、新たなビジネス機会が広がっています。キャンピングカー関連のITサービスを手掛ける[カーステイ](横浜)が参入したのは、個人所有のキャンピングカーのレンタルを仲介する事業「バンシェア」。キャンピングカーのオーナーの多くが、車を使用するのは年間で20日前後にとどまることから、副収入目的で貸し出すオーナーが「バンシェア」に登録。今年の春時点で、登録会員数は3万3000人に上りました。

 個性的な車両が増えてきたことや、車中泊ブームの盛り上がりなど、コロナ禍を経た新しい生活様式の中に、キャンピングカーという文化がより身近になって滑り込んできたのは明らかです。

 世界に目を向けると、日本と国土面積の近いドイツのキャンピングカー保有台数が約150万台。ドイツの10分の1にも満たない日本のキャンピングカー市場の伸びしろは、たっぷりとありそうです。

※参考:

(一社)日本RV協会           https://www.jrva.com/

カーステイ                https://carstay.jp/

(一社)日本自動車会議所      https://www.aba-j.or.jp/

日経МJ(2023年3月1日付)

カドー               https://cado.com/ 日経МJ(2023年2月20日付)

 

■町全体が一つのホテルに。「分散型ホテル」という新しい旅のカタチ。

 一つの町の中に、フロント、宿泊、飲食などの機能を棟ごとで分散し、町全体を一つの宿泊施設として町ぐるみで観光客をもてなす「分散型ホテル」と呼ばれる形態が全国で増えています。しかし、単にこのカタチを取り入れただけで「分散型ホテル」と名乗ることができるわけではありません。それは、分散型ホテルの最重要条件である、地域内の空き家や古民家、空き店舗を改修(リノベーション)して利活用することが大前提となっているからです。そして宿泊客には、地元の店舗を利用し、街を周遊してもらって消費を促す----分散型ホテルには、空き家問題の解消と共に地域経済の底上げと活性化という役割も託されているのです。

 地域ぐるみで観光客をもてなすという形態は、イタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ」という取り組みがモデルになっています(アルベルゴが「宿」、ディフーゾが「分散した」の意味)。1976年にイタリア北部で発生した大地震の後に、多くの住人が町を離れて空き家となった問題を解決するために考え出されたものでした。

 日本における分散型ホテルの第一号は、2009年に生まれた「篠山城下町ホテルNIPPONIA」。丹後篠山の城下町に点在する古民家をリノベーションした、全7棟から成るホテルです。“NIPPONIA”とは、全国各地で歴史的文化財の保存と活用の両立を実践する、一般社団法人[ノオト]が手掛ける分散型ホテルのブランド名です。

 さらに、2017年には『旅館業法』が改正され、本来、一つの宿泊施設内に備えられているべき設備や施設が分散していても、一つの宿泊施設として営業が許されるようになったことが、その後の分散型ホテル拡大の追い風となりました。

 全国に広がりを見せている分散型ホテルですが、立地や町の成り立ちなどによってさまざまな“個性”があります。

 奥多摩湖の上流に位置する山梨県小菅村。人口663人という過疎が進む村です。そこに2014年、大月へ通ずるトンネルが開通したのを機に、“道の駅こすげ”が開業。村を訪れる観光客は10年前の2倍以上に。しかし、泊まるところがありません。村としては、日帰りではなく宿泊のほうがありがたいと、2019年、“700人の村が一つのホテルに”をコンセプトに、5棟6室+レストラン棟の「NIPPONIA小菅 源流の村」が誕生しました。

 江戸の風情ある町並みが残る千葉県・佐原。その中心地区に点在する歴史的建物をリノベーションして一つのホテルとしたのが「佐原商家町ホテル NIPPONIA」。3つの宿泊棟とレストラン棟は、かつての商家でした。

 東海道五十三次、最大級の宿場町として栄えた滋賀県・大津。築100年以上の町家が多く残り、その数、約1500棟。そのうち約1割は空き家状態でしたが、そんなエリアを再び盛り上げようと、“街に泊まって、食べて、飲んで、買って”をコンセプトに2018年、「商店街HOTEL 講(こう) 大津百町」が誕生。客室は7棟の町家を改修し、うち5棟は1棟貸し。

 “伊予の小京都”大洲(おおず)に誕生した日本最大級の分散型ホテルが「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」。町家や古民家、豪商宅などがフロントやレストラン、客室として、大洲城を中心に点在する、城下町まるごとホテルです。今春、5棟(8室)が新たに加わり、全22棟28室となりました。

 まるで“住まうように泊まり、暮らすように旅を楽しむ”滞在型の観光を主軸とした分散型ホテル。“地域再生”と“新しい旅のスタイル”というニーズが合致したことによって生まれた新感覚の宿泊体験。日本各地には、再生を待ち望んでいる“素材”が、まだまだたくさん眠っているはずです。

※参考:

(一社)ノオト          https://team.nipponia.or.jp/note-institute/

JTB               https://www.jtb.co.jp/

一休.com           https://www.ikyu.co.jp/

朝日新聞(2022年8月23日付)