NEWS
-お知らせ-

お金の情報・まめ知識 2023/1/1

LDCレポート【1月号】

■行き先はクジまかせ。非日常感がウケてます、「ランダム旅」。

 コロナ禍で利用が落ち込んだ旅行需要の回復につなげようと、鉄道や航空など、大盤振る舞いともいえるユニークな旅のスタイルが話題となっています。

 それは、運まかせで行き先が決まる「ランダム旅」と呼ばれる、一種の“ミステリーツアー”です。

 LCC(格安航空会社)大手の[ピーチ・アビエーション](大阪)が2021年から発売して大ヒットとなったのが「旅くじ」。1回5000円(税込)の“ガチャ(カプセル型自販機)”を引くと、中には、行き先と、そこまでの往復航空券購入に使える6000円分のピーチポイント交換用のコード、オリジナル缶バッジなどが入っています。行き先は13カ所の中から指定され、チケットは有効期限内に各人で予約します。

 大阪でスタートしたこのサービスですが、出だしはいまひとつでした。しかし、SNSが火付け役となって徐々に話題となり、10~20代前半のZ世代を中心に拡散。旅くじを引く様子の動画再生回数が1800万回を超え(2022年10月時点)、多くのメディアも取り上げた結果、2万7000個余りを売り上げる異例のヒットとなりました。同社ではまた、2022年夏から「開運旅くじ」を宝くじ売り場で発売。シニア層の取り込みを図るための企画で、おみくじのように木筒からくじを引くと(1回5000円)、6000円か1万円分のポイントが得られ、航空券と交換できるというもの。

  [JR西日本]は昨年7月、専用アプリ内でサイコロを振り、出た目で行き先が決まる「サイコロきっぷ」を3カ月の期間限定で発売。行き先は、北陸から九州までの在来線や新幹線の7つの駅から指定。サイコロひと振り5000円で、往復運賃が通常の5~8割引で手に入るとあって、発売2週間ほどで延べ約10万人分の購入がありました。

 [JR東日本]が昨年12月から始めたのが、「どこかにビューン!」。利用者が買い物や定期購入などでたまった“JRE POINT”6000ポイント(6000円相当)を使って往復旅行ができるという商品です。予約サイトで出発希望日と出発地を入力すると、47の新幹線駅からランダムに選ばれた4つの行き先候補駅が表示。そのうちの1つの駅に発着する往復チケットが手に入るというサービス。割引率が4~8割超とかなりお得。

 “くじ”的要素で行き先が決まる運まかせの旅。自分がどこへ行くのかわからないワクワク感と、予想外の展開が味わえるスリル感。そして、大幅割引きのお得感。自分で決めるのは難しいけど、指定されたら行こうかなといった価値観を持つZ世代の心理をうまく捉えました。ランダム旅に出会えなかったら、この場所へは来なかった-------これまで、制度面でも割引面でも、やや“お堅い”イメージの交通業界に、遊びごころある新しい風が吹くことは、利用者として大いに歓迎したいところ。

※参考:

ピーチ・アビエーション     https://www.flypeach.com/

JR西日本             https://www.westjr.co.jp/ 

 

■コメの用途が拡大。日本発、カフェインレスの「玄米コーヒー」。

 健康意識の高い人の間で、今、新しいタイプの健康飲料として注目されているのが「玄米コーヒー」。“コーヒー”と名乗っているものの、カフェインはゼロ。コーヒーのような香ばしい味わいと、コメならではのほのかな甘さが特徴のお茶で、玄米を遠赤外線でじっくりと焙煎し、黒焼きの粉末状にしたもの。この、植物などを丸ごと黒焼きにして食し、そのパワーを体内に取り入れるという用法は、古くから日本の民間療法として行われてきました。

 黒く煎られた玄米は黒褐色の粒に変わるとともに、栄養成分も変化します。この粒の黒さは、“コゲ”ではなく、玄米中のアミノ酸と糖が熱により反応を起こして新たな物質となったもの。玄米には、食物繊維やビタミン(B1、E、B6)をはじめ、カルシウムやマグネシウムといったミネラルなど40種以上の栄養素が含まれていますが、黒焼きにすることで、新たに玄米ポリフェノールが追加されます。同時に、“炭化”され、“食べる炭”と称されるほど極めて強い吸着力を腸内で発揮。油や老廃物を吸着して外に出してくれるデトックス効果や美肌効果が期待できます。

 製品としては、インスタントコーヒーの要領でつくる“粉末(スティック)タイプ”や、水に浸して水出し玄米コーヒーもつくれる“ティーバッグタイプ”。そして、挽いた玄米をコーヒーフィルターに入れ、お湯を注いで抽出する“ドリップタイプ”があります。お好みで、牛乳や豆乳、ハチミツ、黒糖などをプラスするなど楽しみ方はいろいろ。

 玄米は、もみを取り去っただけの精米前のコメで、白米に対して黒米(くろごめ)などと呼ばれます。そして、コーヒー豆やコメが、産地(銘柄)によって味に個性があるように、玄米もコメの産地ごとに酸味や甘みの強弱など、味わいが異なります。

 食品スタートアップの[MNH](東京)では、北海道産ゆめぴりか、山形県産つや姫など、12銘柄のコメ、それぞれの玄米でできたコーヒー「玄米デカフェ」(100g/780円前後)を展開。

 コメ加工の[ビーエムステーション](鳥取)では、無農薬栽培の玄米を8~12時間焙煎させた「ぶらうんかふぇ」(80g/1080円)を販売。スティックタイプなど、4種類の商品を展開。米国にも輸出しています。

 お茶でも、コーヒーでもない、玄米だけでできたカフェインレスの玄米コーヒーは、妊娠中や授乳中の方やお子さんでも安心して飲むことができるとあって需要も拡大傾向。年々消費が縮小している、コメの、もう一つの用途としても期待が高まります。

※参考:

MNH             https://www.mnhhappy.com/

ビーエムステーション  https://bms-g.com/

日経МJ(2022年10月3日付)  

JR東日本            https://www.jreast.co.jp/

日経МJ(2022年9月16日付/同9月19日付)

 

■全国に波及、ビジネスとしての「古民家再生」。

 全国に点在する空き家の増加が社会問題として注目を集めて久しく、少子高齢化の加速によりさらに深刻化していくことが予想されます。管理が放棄され、防災、防犯、衛生、景観と、様々な面で周辺地域の環境に悪影響を及ぼしている“空き家”。総務省の『2018 住宅・土地統計調査』(5年ごとの統計のため、この調査結果が最新)によると、全国には約846万戸の空き家があり、総住宅数に占める割合は約13.5%にものぼります。この数は、8軒に1軒が空き家という状況を示しています。

 そしてここ数年は、空き家の中でも、全国に21万戸近く存在するといわれる「古民家」に熱い視線が注がれています。

 古民家とは、『全国古民家再生協会』の定義では、「1950年以前に建てられた木造住宅」とされており、それにならうと、最も新しい古民家は、築約70年の建物ということになります。大きな梁(はり)に太い柱、玄関口に土間があり、茅葺(かやぶき)や日本瓦などの屋根をもつ古い木造家屋。日本特有の建築技術や日本人の生活習慣が息づき、その土地の歴史や伝統を感じることのできる文化的価値の高い建造物。そんな古民家をリニューアルし、住宅や商業施設、宿泊施設などに生まれ変わらせる「古民家再生事業」が今、ビジネステーマの一つとして浮上しています。古民家の再生に伴う修繕やリノベーション関連の潜在的な市場規模は、およそ1.8兆円と試算されています(日本政策投資銀行)。最近では、地方自治体や日本政府も力を入れており、バックアップ体制が整った一大事業に膨れあがっています。そのマーケットが巨大なことから、ファンドの組成や地元金融機関の開業サポート、大手ハウスメーカーや異業種からの参入も相次ぐなど、周辺の動きが活発化しています。

 奈良県橿原市では築80年の町家をゲストハウスに再生。千葉県佐原市では築160年の商家をホテルに改修。地元の大工・職人が古民家のたたずまい保全に腕を振るいました。福井県若狭町では築130年の古民家をシェアオフィスに。滋賀県大津市では築100年の町家をホテルにリノベーション。兵庫県篠山市の限界集落にある築150年の古民家は農泊施設に改装。群馬県は地域の不動産会社や金融機関と一体となって“コミンカ コナイカ事業”を立ち上げました。

 ちなみに、古民家の多い地域は、大阪、兵庫、愛知、京都、広島の順で、西日本が圧倒的に多い傾向があります。

 古民家は、人口減や老朽化を理由に解体されることが少なくありませんが、最近では有力な地域資源としての価値が見直されはじめています。地域ぐるみで古民家の再生や活用に取り組んでいくことで、町の賑わいが創出され、国の成長戦略の一つである地方創生への効果的ツールとして期待されています。まさに、“古民家再生”が“地域再生”につながっているといえそうです。

※参考:

総務省               https://www.soumu.go.jp/

(一社)全国古民家再生協会   http://www.g-cpc.org/

日本政策投資銀行        https://www.dbj.jp/

日経МJ(2022年9月2日付)