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お金の情報・まめ知識 2022/8/1

LDCレポート【8月号】

人も企業も“ととのえる”。熱く盛り上がる、「サウナ」のチカラ。

 サウナ用語の“ととのう”が、昨年、「新語・流行語大賞」にノミネートされたのをはじめ、サウナ愛好家が“サウナー”と呼ばれ、サウナに通う“サ活”、サウナを目的に旅行する“サ旅”、サウナ後に楽しむ食事を“サ飯(めし)”と、“サウナ語”が続々と生まれ、サウナをめぐる消費も着実に盛り上がっています。

 サウナの最大の魅力は、特別な身体能力や技能が必要なく、年齢や肩書きを脱ぎ捨てて楽しむことができる点です。

 また、サウナが、仕事のパフォーマンス向上に寄与するという考えから、積極的にビジネスの場に取り入れる企業が増えています。

 来年、新社屋に移転予定の[ジンズ]は、社内にサウナを設置する計画を進めています。単に“気持ちいい”からという理由ではなく、精神疾患や認知症などにも効果があるという医学的エビデンスが後押し。1人用と4~6人用のコミュニティーサウナを設ける予定。

 [JAL]では、若手から50代まで400人超の社員(うち4割が女性)から成る“サウナ部”が誕生。昨春には、日本全国のサウナ付き宿泊施設と航空券をセットにした旅行商品「JALサ旅ダイナミックパッケージ」を企画しました。さらに、こうしたさまざまな企業のサウナ部の集合体「ジャパン・サウナ部アライアンス」が2019年に発足。企業サウナー同士の深い関係づくりを目指し、今春には加盟企業が100社を突破しました。

 サウナ熱は、コロナ禍で疲弊した地域経済にも及び、サウナを観光のコンテンツとして街おこしの起爆剤にする動きが全国で沸き起こっています。

 山梨県では、“アウトドアサウナの聖地”を目指して昨年、官民共同のプロジェクトを立ち上げ、サウナキャンプ場などに補助金を出してサポート。

 昨年、全国の自治体で初めて“サウナのまち”を宣言した、豊後大野市(大分県)。鍾乳洞を生かしたサウナが売りで、青色のライトで照らされた神秘的な洞窟に足を踏み入れ、水風呂は名水に体を沈めます。

 姫路市の「神姫(しんき)バス」では、バス車両を丸ごとサウナに改造して移動型サウナ「サバス」をつくってしまいました。車内の前方に事務&休憩スペース、後方には薪ストーブを使用したサウナ室が。“降車ボタン”を押すと、熱したサウナストーンに水が落ちて蒸気が広がる仕組み。サウナに入った後は、仮設プールや川、湖といった自然の水風呂へ。今年3月からは、駐車スペースのある施設やアウトドア施設への貸し出しを始めています。

 汗を流しませんか-----2019年夏、スズキの鈴木修会長(当時)は、トヨタの豊田章男社長をサウナに誘ったといいます。当時は、両社が相互出資の提携合意に至った時期。世代も境遇も異なる二人のトップの距離を縮めた“サウナの功績”は、小さくなかったようです。

※参考:

ジンズホールディングス   https://jinsholdings.com/jp/

日本航空            https://www.jal.com/ja/

神姫バス            https://www.shinkibus.co.jp/

日経МJ(2022年4月8日付/同4月10日付/同4月13日付/同4月15日付/同4月18日付/同4月20日付/同4月29日付)

 

■値引きの精度アップ。進化する「ダイナミックプライシング」。

 商品やサービスの“価格”を、需要と供給に応じてリアルタイムに変動させる「ダ

イナミックプライシング(変動価格制)」(以下、DP)。

 よく売れる商品は、収益が多く得られるように高めの価格を設定し、あまり売れな

い商品は、価格を下げることで販売数を増やして売り上げのバラつきをなくし、収益全体の最大化を図ることが狙い。

 システム自体は、昔から一般的で目新しい取り組みではありませんが、最近のDP

は、価格を決める計算や変動のタイミング制御にAIが使われている点が、これまでの、勘や経験から導き出されるアナログ的DPと大きく異なるところ。AIを用いることで、大量のビッグデータを収集・分析。それを基にした需要予測、価格調整を自動的に、かつリアルタイムに行うことが可能となりました。

 [イオン]では昨年、総菜の割引率を、データ(天候、客数、販売実績など)に基づき、AIが時間帯ごとに適切な価格を算出する「AIカカク」システムを全店舗に導入。

 サラダの自販機「SALAD STAND(サラダスタンド)」(運営:KOMPEITO)にもDPシステムを採用。AIセンサーを利用して、自販機周りの人の通過数、滞留人数を計測し、そこから得た情報と実売データ、賞味期限などを組み合わせてDPを構築。フードロス削減にも一役買っています。最初の設定価格は980円で、1時間ごとに価格を下げ、完売を目指します。

 エンタメやスポーツのチケット販売にもDPの波が押し寄せています。

 野球の[ソフトバンクホークス]では他社に先駆けてDPを導入。1席単位で、売れ行きなどに応じ、15分ごとに価格更新。同一席種を横並びで購入しても、隣りの席と価格が異なることも。

 ほかにも、コンビニ、ガソリンスタンド、バス、旅行代理店、スキー場、レンタカー、映画館、遊園地、美容院、居酒屋、駐車場、高速道路、等々。今や、あらゆる業種にDPが席巻。

 DPは、導入する側にとっては、収益の最大化につながるというメリットがある一方、ユーザー側から見ると、通常料金より高くなることへの不信感が生まれ、顧客離れの危険性をはらんでいることは否めません。同等の商品を、時間差で高値で購入していた客は損をした気分になり、後味の悪さが残ってしまいがち。心象を損ねないためにも、顧客には導入理由や価格変動の経緯をしっかりと伝える“公平性の確保”が重要となってきます。

 データを瞬時に分析して価格に反映させるのは、AIにしかできないスゴ技。需要と供給のバランスによって価格が決まるということは、裏を返せば、価格を上げ下げさせることで需給をコントロールできることを意味します。今後、販売の現場で、DPがさらにパワーアップしていくことが容易に想像できます。

※参考:

イオンリテール            https://www.aeonretail.jp/

KOMPEITO             https://www.officedeyasai.jp/

福岡ソフトバンクホークス     https://www.softbankhawks.co.jp/

日経МJ(2022年4月29日付) 

 

■“内(うち)食”より簡単、“中(なか)食”より安上がり。「ミールキット」需要、急拡大。

 あらかじめ下ごしらえされた食材と、調味料・レシピがセットになった使い切り型商品「ミールキット」の需要が高まっています。一から自宅で調理する“内食”と、料理宅配や弁当・総菜を買ってきて自宅で食べる“中食”の中間。献立を考える負担から解放され、食材を切ったり計量したりする手間も要らず、短時間(10~30分)で、しかも簡単とはいえ“調理”することで手作り感も得られるところが人気の理由。また、1食分の食材のため、提供する側・利用する側、双方で食材をムダにすることなく廃棄を回避できるというメリットも。

 市場は順調に成長しており、食品関連以外でも、さまざまな業種の企業がミールキット市場に新規参入し、競争は激化の一途をたどっています。

 食品宅配サービスの[オイシックス・ラ・大地](東京)は、主力ブランド「Kit Oisix」(主菜1品・副菜1品/1人分1食600~800円)の定期利用者数が、昨年末時点で約22万人に達し、対前年比で8割近く増加。[大戸屋]や[モスバーガー]などとのコラボ商品や栗原はるみさん監修のキットがヒットし、新規顧客の拡大につながりました。

 ミールキットの先駆け的存在の[ヨシケイ](静岡)は、1人用のキット(2~3品/1食490円~)を充実させるほか、食を通じた地域貢献にも積極的で、徳島県のブランド鶏“阿波尾鶏”を使った親子丼(2人用1630円~)をキットで商品化して好評を博しました。

 2020年からミールキットを手掛ける[ワタミ]は、今年2月、子供向けの食事宅配サービス「PAKU MOGU(パクモグ)」を立ち上げました。野菜を小さくカットするなど、特に3~10歳児が食べやすい工夫も。2人用・週1回配送の場合、1キット1198円(1人当たり559~599円)。全国533拠点の営業所網を活用し、今年中に一日3万食の販売を目指します。

 青果物流の最大手[デリカフーズ](東京)は、今年4月から、ミールキット「楽(らく)彩(さい)」のサービスを始めました。野菜のプロが厳選したこだわりの新鮮野菜が売り。当日の午前9時までの注文で、当日の午後5時以降に指定した場所(駅ナカコンビニ「NewDays」など)で受け取れる仕組み。価格は800円~。

 そのほか、生協系[コープデリ]は、世界各国の名物料理を簡単に作れる「World Dish」シリーズが好調。[良品計画]も昨年、冷凍食品の新シリーズ「フライパンでつくるミールキット」などを投入。さらに、[イオン]などの大手スーパー、[シャープ]など調理家電メーカーも、相次いで参入。

 コロナ禍で、リピーターの増加と共に、販売チャネルの充実もあってビギナーも増え、ミールキット市場は急拡大。ある調査によると、ミールキットの利用経験者はわずか1割強にとどまっているとか。まだまだ発展途上で、開拓の余地は十分残されており、今後さらにおいしさを増す市場といえそうです。

※参考:

日本能率協会総合研究所           https://www.jmar.co.jp/

オイシックス・ラ・大地                  https://www.oisix.com/

ヨシケイ                            https://yoshikei-dvlp.co.jp/

ワタミ                              https://www.watami-takushoku.co.jp/

デリカフーズホールディングス      https://www.delica.co.jp/

コープデリ生活協同組合連合会   https://efriends.coopdeli.jp/

日経МJ(2022年2月11日付/同5月16日付)