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お金の情報・まめ知識 2021/3/2

LDCレポート【3月号】

Cooked rice in bowl with raw rice grain and dry rice plant on wooden table background.

■コメの「少量・定額・宅配」-----これが、新しいライススタイル。

   日本人の“コメ離れ”に歯止めがかかりません。国の需給見通しでは、少子高齢化や人口減、そして食生活の洋風化といったライフスタイルの多様化を要因に、消費量は毎年8万トンほどの自然減を見込んでいました。しかし、直近1年間(2019年7月~2020年6月)では、見通しを大幅に超えて22万トンも減少。

 その一方、巣ごもり生活の定着で家庭用のコメの消費量は増大。その現状をチャンスと捉えたコメ農家や米穀店、さらにネット通販商社などが、新しい波を起こそうと立ち上がっています。

 2~3年前から、コメを定期的に少量ずつ自宅に届ける定額サービス(サブスクリプション)が話題となっていましたが、コロナでさらに注目度がアップ。

 大阪の老舗米屋[雪本米穀]では、[現代経営技術研究所](東京)が運営するサブスクサービスのサイト「subsc(サブスク)」を利用して2019年からコメの定額宅配サービスを始めています。全国各地から厳選したコメを発送直前に精米。「コメ1kg×2種+ご飯のお供1品」のセットが、毎月1回、専用の化粧箱に入って届くプランで月額2650円(税・送料込み)。どんなコメやおかずが届くかは到着するまでわかりませんが、そのワクワク感が利用者の楽しみを倍増しているようです。

 同様に、subscを利用している[小張精米店](東京)では、お米マイスターである店主が、全国の「農薬・化学肥料不使用米」6種、または「特別栽培米」(農薬・化学肥料の使用が通常の半分以下)12種の中から毎月1種類を厳選。「特別栽培米」は2kgで月額2000円(税・送料込み)、「農薬・化学肥料不使用米」は同2500円。共に、出荷直前に精米されたフレッシュなコメが届きます。同店では、店名ロゴやパッケージ、配送ボックスのデザインにまでこだわっており、ギフトとしての訴求にも力を入れています。

 5種類のプレミアム新潟産こしひかり“HIBARI”の中から、希望する3種類が定期的に届く「選べるサブスクこしひかり」を始めたのは、コメのネット販売商社[S.T.Holdings](東京)。月額1500円(税別・送料込み)で、300gの精米したてのコメが、2週間~1カ月に1度、3袋届きます。

 年々、炊飯器の進化は著しく、誰でも間違いなくおいしいご飯が炊けるようになった今。毎日、同じ種類のコメを食べなくてはいけないということはなく、その日の献立や気分に合わせて食べ比べを楽しむ-----自分では買ったことがない種類の“未知のコメ”と出会える体験が、通常のネット通販とはひと味違った魅力に。嗜好品としてのコメとの付き合い方も、味わってみる価値がありそうです。

※参考: 農林水産省         http://www.maff.go.jp/
雪本米穀                    https://yukimoto-beikoku.com/
現代経営技術研究所         http://www.gen-ken.co.jp/
小張精米店             http://www.cam.hi-ho.ne.jp/
kobariseimaiten S.T.Holdings        https://farmex.tokyo/

日経МJ(2020年11月16日付)

■テレワーク時の“小腹”対応に。おやつ以上、食事未満の「テレワ食」。

 コロナ禍の影響からテレワークが一気に普及し、働き方の一つとして定着しつつあります。それに伴い、“イエナカ消費”といわれる様々なモノやサービスの需要が高まり、がぜん勢いを増しています。

 当然、自宅での飲食機会の増加を受け、“食”の市場にも商機が訪れています。テレワーク中、3度の食事以外の時間帯で空腹をおぼえた時に口にするちょっとした“間食”が、近頃では「テレワ食」と呼ばれて話題になっています。“間食=おやつ(お菓子)”という概念ではなく、PCを操作しながら軽く食べられる“小腹めし”という位置付け。調理は不要、またはごく簡単で、手を汚さずに片手で食べられること。おやつでもない、食事でもない、いわば“おやつ以上、食事未満”の新ジャンル食です。

 テレワ食の筆頭格は、[日本水産]のカップ入りスープ「Suu Kamu Soup(スゥカムスープ)」(250円/税込)。その名の通り、吸って・噛む、新感覚スープで、具だくさんのため極太のストローが付いた、食べ応えのあるスープです。電子レンジで温めるだけ。「ミネストローネ」と「オニオンクリームスープ」の2種。当初は、乳児を持つママさん向けに、“調理も食器洗いも不要”“抱っこ中でもこぼしにくい”といったコンセプトで開発されたものでした。ところがコロナ下の2020年、その商品価値が、テレワーカーのニーズにジャストフィットしたというわけです。

 [ポッカサッポロフード]からは、湯を注ぐ粉末タイプの「じゃがネル コロッケ味」(150円/税別)。湯を入れてスプーンで1分間ほど練ると、だんだん粘着度が増してマッシュポテトに。腹持ちもよく、冷めてもおいしく、“練る”という単純作業が気分転換にもなりそう。また、同社からは、湯を注いでかき混ぜ、3分でできあがるカップご飯「トロリ~ズ」も発売中。「サムゲタン風」「濃厚クリームチーズ」「花椒香る担々」の3種(各230円/税別)。食べ応えがあり、野菜も入ってヘルシー。 冷凍食品にも“テレワ食”の波が押し寄せています。[ニチレイフーズ]の「片手で食べられるお好み焼」(4個入り340円前後/税込)は、外見は今川焼きで、あんこに相当する部分に、ソース、マヨネーズ、豚肉、キャベツ、紅ショウガなどの具材がぎっしり。電子レンジで温めるだけの“ワンハンド食”です。 自宅にこもりがちになり、“食事”と“間食”の境界線がボーダーレスとなるテレワークから、「テレワ食」のような新しい食のスタイルが生まれました。今後も高まる一方の需要に応えるべく、食品メーカー各社にはいっそうの商品開発能力が試されることになりそうです。

※参考:
日本水産                https://www.nissui.co.jp/
ポッカサッポロフード&ビバレッジ https://www.pokkasapporo-fb.jp/
ニチレイフーズ             https://www.nichireifoods.co.jp/ 日経МJ(2020年11月11日付/同11月13日付/同12月2日付)   

   

■“店頭”を“自宅”に。新たな接客販売の場、「ライブコマース」に注目。  

コロナ禍の外出自粛が、“非対面”“非接触”を利点とするオンラインのEC(Eコマース=電子商取引)市場の拡大を後押ししています。中でも特に、ネット通販やオンラインショップといった従来型のECに、リアル店舗の要素をプラスした、「ライブコマース」という新たな販売方法が急速に広まっています。自宅のPCやスマホでネットの生配信動画を見ながら、リアルタイムで商品を購入できるショッピング形態。

 従来のECとの大きな違いは、配信者(販売側)と視聴者(消費者)がリアルタイムで双方向コミュニケーションが実現できる点です。実店舗の店頭で買い物をするように、生地の質感やサイズ感などを質問すると配信者が即答してくれます。

 ライブコマースの成功には、“商品説明”が大きく左右します。商品に対しての理解の深さと商品説明時の熱量が、購買に直結するからです。その方法には二つの種類があり、一つは、ユーチューバーやインスタグラマーなどの、いわゆるSNSでカリスマ的なインフルエンサー(ネット上で消費者の購買決定に大きな影響を及ぼす人)やテレビタレントなどが商品を紹介する方法。もう一つは、販売する企業のスタッフ(販売員や商品企画担当者など)による商品紹介。豊富な商品知識を武器に説得力重視の訴求スタイルです。

 店頭販売の業績落ち込みを補填しようと、多くの企業がライブコマースを活用した販路拡大に前向きな姿勢を見せています。  2020年度に大幅な赤字を計上した[資生堂]は、昨年7月から[三越伊勢丹ホールディングス]のECサイトでライブコマースを実施。次いで9月からは、自社サイトでも、美容部員による商品説明やカウンセリングを始めました。

 [三越伊勢丹]では、2018年から季節のギフトでライブコマースを活用。昨夏のお中元では3万人以上の視聴者で、EC売り上げの過去最高を記録。  セレクトショップの[シップス]は、昨年5月に配信開始。ショップスタッフが商品の特徴や着こなしを説明していくスタイルで、より店舗に近い形の臨場感を演出。[ビームス]も昨年3月に初のライブコマースを実施。1時間の配信で、6000人を上回る視聴者を獲得しました。

 “ライブコマース先進国”といわれる中国では、2015年頃から爆発的に市場が拡大。2020年には1兆元(約15兆円)を超え、19年の2倍以上を達成。中国でここまで浸透した背景には、商品の信頼性の低さが起因するといわれています。

つまり、ニセ物が多く出回るため、消費者は自ずと信用できる人から購入することを心掛けるようになります。そこでライブコマースのインフルエンサーの出番です。“あの人が推すのなら本物だ”となって、ライブコマース市場はまたたく間に膨れ上がったのです。ここに、ライブコマースという販売形態の神髄があるように思われます。

 “通販サイト”と“リアル店舗”に次ぐ、第3の販売場所として、企業、消費者、双方から注目を集めるライブコマース。昨年には5Gの商用化がスタートしたこともあり、これからのECビジネスにおける存在感を、いっそう高めていくことが予想されます。

※参考:
資生堂                https://www.shiseido.co.jp/
三越伊勢丹ホールディングス      https://www.imhds.co.jp/
シップス               https://www.shipsltd.co.jp/
ビームス               https://www.beams.co.jp/
朝日新聞(2020年9月9日付) 日経МJ(2020年9月16日付/同11月6日付/同11月16日付/同12月18日付) 日本経済新聞電子版(2020年11月10日付)