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お金の情報・まめ知識 2019/8/1

LDCレポート【8月号】

■世界を酔わせる“SAKE”へ。過去最高の輸出を更新続ける、「日本酒」。

 若者の“酒離れ”の代表格のように言われ、ひたすら長期低落傾向を余儀なくされてきた日本酒ですが、ここにきてスポットライトが当たる、新たなステージが生まれました。それは、海外市場です。欧米、アジア諸国を中心とした輸出が大きく伸び、昨年、初めて過去最高の200億円を突破したのです(財務省)。2012年に89億円だった輸出額が、翌年には100億円を超え、その後わずか5年で2倍に達したことになります。

 海外で日本酒の注目度が一気に高まったのは、2013年、“和食”がユネスコ無形文化遺産に登録されたのとセットで注目を浴びたのがきっかけでした。加えて、数々の海外の品評会での高評価も、日本酒の株を上げる重要な証しとなっています。また、2017年から始まった、フランス人ソムリエによるフランス人のための日本酒品評会「Kura Master」も欧州市場での日本酒の普及に貢献。さらに、同じく2017年に、日本ソムリエ協会(田崎真也会長)によって、世界初となる日本酒の専門資格を認定する制度「SAKE DIPLOMA(サケ・ディプロマ)」が創設されました。専門知識やテイスティング技量を持った、ワインのソムリエのようなプロを育成するのが目的です。

 日本酒のグローバル化の動きは、海外の醸造家が現地で仕込む“地酒”の存在感の高まりにも表れています。欧米、カナダ、メキシコ、中国、豪州、ブラジルなど、約30カ国の酒蔵で日本酒がつくられており、その多くは、和食に合う日本酒としてではなく、現地の料理に合うような風味に仕上げられていることが特徴です。日本の伝統的な酒造技術にこだわらない独自の製法で、例えば、ワインの酵母を使って醗酵させることで酸味を出したり、バニラやシナモンといった日本酒のイメージからかけ離れた風味付けをするなど、逆に日本の業界に新たな風を吹き込んでいるのです。今年で8回目を迎え、日本酒の世界一を決める品評会といわれる「SAKE COMPETITION 2019」が、5月に日本で開催されましたが、ここでも注目を集めたのは、海外醸造の日本酒でした。昨年新設された「海外出品酒部門」に今年は6カ国、13蔵から28銘柄が出品。1位は米国の蔵元が受賞しました。

 今や“SAKE”が国際語となり、輸出が増え続けている日本酒ですが、残念ながら海外で提供されるのは、まだ和食店が中心です。「いずれ日本酒は白ワインの脅威になる」というフランスの著名なシェフの発言がある一方で、「フレンチに合わないかぎり日本酒は定着しない」と言われているのも現実。

 いつまでも、乾杯用の食前酒の立場に甘んじていては海外での需要拡大は望むべくもありません。ワインのように、食中酒としての地位を得ることが消費量の伸びにつながり、海外市場での存在価値を高めていくことになるはずです。

※参考:
財務省                    http://www.mof.go.jp/
Kura Master               https://kuramaster.com/
SAKE DIPLOMA               https://www.sommelier.jp/
SAKE COMPETITION          https://sakecompetition.com/
日経МJ(2018年11月19日付/2019年3月25日付/同4月8日付/同5月24日付)
朝日新聞(2019年3月23日付)


■ゴクンと飲んで、ごちそうさま! 「飲む食事」は、令和時代のスタンダード?

 “時短”が合言葉のような現代人に朗報です。食事を“飲んで”済ませるというコンセプトの商品が相次いで登場して話題となっています。

 [JA北大阪]が開発し、昨年8月から販売しているのは、「飲めるごはん」(1缶245g/税別260円)。米、小豆、ハトムギを混ぜて炊き上げ、とろみのある飲み物に仕上げました。加水・加熱が不要で、缶からそのまま口にすることができ、栄養分(たんぱく質、脂質、炭水化物など)と水分を同時に補給できるとあって、災害時の備蓄用非常食としても注目されています。味は、「梅・こんぶ風味」「シナモン風味」「ココア風味」の3種類で、保存期間は5年間。自治体を中心に、多くの問い合わせが寄せられているとのことです。

 おにぎりを飲んでしまおうと、今年3月に発売されたのが、[ヨコオデイリーフーズ](群馬県)が開発した「飲むおにぎり」(パウチ容器130g/税別160円)。スパウト(飲み口)付きの容器で、見た目はゼリー飲料そっくり。1パックでおにぎり約1個分のカロリー(200kcal)とレタス1個分の食物繊維が含まれています。常温保存で1年。味は、「梅こんぶ」と「梅かつお」の2種類。紀州南高梅、北海道産昆布、国産米、国産海苔と、原料にこだわっておいしさを追求。発売以来、SNS上で盛り上がり、当初計画の8倍(80万個)を出荷するまでの人気ぶり。全国のスーパーなどで販売されており、今後、新しい“ドリンク”の投入も計画中。

 “カレーライスは飲み物だ”-----かつて、タレントのウガンダさんが発したこの迷言を実際に商品化してしまったのが、[フェリシモ](神戸)の「飲むカレー CARRY CURRY」(1セット3缶/税別1140円)です。商品名に、“CARRY=運ぶ”というワードを“CURRY=カレー”とかけて表記しているように、商品のコンセプトは“携帯カレー飲料”。中身は、国産トマトのピューレや国産タマネギを使用したカレールーのみで、1缶170g、53kcalと超ヘルシー。辛さは中辛程度で、食事としてコンビニのおにぎりやパンと一緒に食べる(飲む)のもオススメ。昨年10月に数量限定で販売したところ、予想を上回る反響で2週間を待たずして完売。今後は、さらに進化させ、風味を変えてシリーズ化も計画中とか。

 「飲む食事」は今後さらに広がりそうな気配。しかし、マーケット上はともかく、はたしてビジネスパーソンにとって、仕事しながら空いた手でとるような食事が歓迎されるものなのか、複雑なところではあります。

※参考:
JA北大阪              https://ja-kitaosaka.or.jp/
ヨコオデイリーフーズ      http://www.yokoo-net.co.jp/
フェリシモ             https://feli.jp/
日経МJ(2019年4月17日付)


■もう、外国語なんて怖くない! おもてなしの最強ツール、「自動翻訳機」。

 来年の五輪イヤーには4000万人を目指すといわれる訪日外国人ですが、彼らが日本に来て感じる最大の不満は、日本人とコミュニケーションがとれないことだといわれています。小売りやサービス業の現場にとっては、言葉が通じないがためにみすみす販売機会を逃してしまう、まさに切羽詰まった大問題です。

しかしそこに、“おもてなしの壁”を取り払うべく強い味方が現れました。接客の武器となる「自動翻訳機」----コンピュータによって、ある言語を異なる言語に自動的に翻訳してくれる、まさに“夢の通訳機”です。

 タイプとしては、インターネットに接続する“オンラインタイプ”(Wi-FiやSIMカードを利用)と、ネット接続不要の“オフラインタイプ”があり、さらに、オンライン・オフラインの両方を備えたものもあります。また、日本語で話した内容を相手の言語に翻訳するだけの“一方向タイプ”と、日本語の内容を相手の言語に翻訳し、相手の言語も日本語に翻訳する“双方向タイプ”の2種類があります。

 2017年に初代を発売してからシェアトップを走るのは、[ソースネクスト]の「ポケトーク」(SIMカード内蔵/税別2万9880円)。“オンライン・双方向”のタイプで、ボタンを押しながら日本語で話し、ボタンを離すと相手の言語に訳される仕組みです。対応言語は74カ国。海外への旅行や出張などの個人ユースはもちろん、接客目的で導入する法人(百貨店、飲食店、ホテル、病院、空港内店舗、バス・タクシー・鉄道など)の数はウナギ登りで、同社では、こういった企業向けの需要増を下支えに、当初の2020年目標販売台数50万台を、倍の100万台に上方修正しました。

 “オンライン・双方向”タイプが主流の中で、数少ない“オフライン・一方向”タイプの機種として存在感を高めているのが[ログバー]の「イリー」。さらに、オン・オフ兼備の双方向タイプの機種としては、[東江物産]の「ランジー」や、外国語の文字を撮影するだけで翻訳してくれる機能も付いた[KAZUNA]の「eTalk 5」など。

 また、自動翻訳は、専用端末機器だけでなく、アプリでも普及しています。

 総務省が所管する「情報通信研究機構(NICT)」が開発したスマホ用アプリ「Voice Tra(ボイストラ)」は、ダウンロードして話しかけると外国語に翻訳してくれる多言語音声翻訳アプリで、31言語に対応し、利用料は無料です。

 忘れてはならないのは、外国語でのコミュニケーションが必要となるのは、観光で日本に“来る”人に対してばかりではないということ。日本人が海外に“行く”場合、あるいは在留外国人のように日本に“いる”人も対象となるはずで、自動翻訳機の出番は、今後ますますグローバルに広がることが予想されます。

それにしても、そうなると、わざわざ外国語を習ったりすることや、翻訳家とか通訳も要らなくなるのでしょうか……?

※参考
ソースネクスト           https://www.sourcenext.com/
ログバー               https://logbar.jp/ja/
東江物産              http://www.toko-trd.com/
KAZUNA               https://kazuna.co.jp/
総務省                http://www.soumu.go.jp/
NICT                 http://voicetra.nict.go.jp/
日経МJ(2018年12月24日付/2019年1月1日付)