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お金の情報・まめ知識 2023/8/1

LDCレポート【8月号】

1人だけ”から進化した、近ごろの「ソロ活」。

 “おひとりさま”というワードが流行語大賞にノミネートされたのが2005年のこと。それから18年あまり。その間、幾多のブームを経て、今や“ソロ活”へと発展。

 誕生当時の“おひとりさま”ブームは、自立を目指す女性たちが主役でした。ところが、スマホの登場でおひとりさまの世界にも変化が。男女を問わず一人っ子が多い現代日本において、小さな頃からネットやSNSが身近にあり、1人で遊んだり、1人で外出することが当たり前の“ネイティブなおひとりさま”たちは、1人の時間を楽しんでいる様子をSNSでアピールしたり、おひとりさまの楽しみ方を共有し合ったり。リアルな場で1人の時間を楽しむだけだったおひとりさまが、徐々に“1人だけど、つながっている”という形に進化していったのです。

 数人がまとまって行く“グループキャンプ”と、コロナ下で人気が高まった“ソロキャンプ”。この二つが融合した「ソログルキャンプ」と呼ばれるカタチも“進化型ソロ活”の一つ。キャンプ場に仲間同士が集まりつつも、テントを立てる時は、お互い声をかけるでも、手伝うわけでもない。それぞれが自由に過ごし、ご飯を食べるのも自分のテントで“ひとり飯”。テントの設営や火おこしなど、助けを求められれば手を貸しますが、基本的には干渉しないというスタンス。かと思えば、仲間の誰かが新しく買ったテントやキャンプの推しグッズを見せ合うことも。

 通常は複数人でするゴルフにも、その波が。

 打ちっぱなしではなく、グリーンの上でゴルフをしたい、でも一緒に行く人がいない…そんなソロゴルファー同士を仲介する「1人予約サービス」を提供するサイトも出現。ゴルフ場側が専用枠を設け、応募してきた人がゴルフ場で現地集合してラウンドを回る仕組み。“接待”とは無縁の、ゴルフを純粋に楽しみたいソロゴルファーたちの支持を集めています。

 進化したソロ活の特徴は、緩いつながりと、ほどよい距離感。仲がいいからと、ずっと一緒にいるのは疲れる。かといって、完全に1人は寂しい。SNSの普及やコロナ下の事情から、必要な時だけつながるという関係に慣れ、深くつき合うことで生じる面倒臭さに敏感になってきている面も。

 そういえば子供の世界では、友だち数人が同じ部屋でそれぞれがゲームをやったり、マンガを読んでいたりと、ほどよい距離感を保ちながら好き勝手に楽しんでいたりします。きっと子供たちは、生まれながらにして“進化型ソロ活”の達人なのかもしれません。

※参考:

日本単独野営協会           https://tandokuyaei.com/

(一社)日本オートキャンプ協会    https://www.autocamp.or.jp/

日経МJ(2023年3月31日付/同4月3日付)

 

■見直される「こめ油(あぶら)」。コロナ前の2倍超に拡大。

 家庭用の植物性食用油でお馴染みなのが、キャノーラ油(なたね)、オリーブオイル、ごま油など。その市場規模は、2020年以降はコロナ禍の巣ごもり需要の高まりから伸長したものの、2022年にはその反動でほぼ横ばい、もしくは減少に転じています。ただ、この仲間で唯一、市場拡大が続いている食用油があります。それが「こめ油」です。2022年の国内市場は、2021年比24%増と好調に推移。コロナ前の2018年比では2.3倍と拡大しています(J-オイルミルズ)。

 こめ油は、玄米から白米へ精米するときに生成された米糠(こめぬか)の油分を抽出して作られます。クセのないサラっとした軽い口当たりに仕上がるのが特徴で、食用油特有の油っぽさやニオイが少ないため、炒め物から揚げ物、ドレッシングまで幅広く使えます。また、熱を加えても酸化しにくいことから、繰り返し使用する際も油の劣化が少なく経済的。さらに他の食用油と比べてベタつきが少ないため、食器洗いもラク。そして何といっても、豊富に含まれている玄米由来の栄養成分がこの油の大きな魅力となっています。悪玉コレステロールの吸収を抑える効果が期待できる“植物ステロール”、抗酸化作用があり、細胞の健康維持を助ける“ビタミンE”が他の油より多く含有、そのビタミンEの数十倍の抗酸化作用を持つ“トコトリエノール”、お米のポリフェノールと呼ばれる、こめ油特有の成分“ガンマ-オリザノール”など。アンチエイジングや糖尿病、高血圧といった病気の予防を目的として、健康や美容への意識が高い消費者から注目を集め、とりわけ高齢者に人気となっています。

 こめ油は、他の食用油と比べると、若干、割高といえます。しかし、輸入大豆などを使った他の食用油が円安や世界規模の穀物相場の高騰を受け相次いで値上がりする中、国産の米糠を使ったこめ油の値上げ幅は相対的に小さく映り、消費者には値ごろ感としての印象が浸透していることも需要の後押しの一因に。

 メーカー各社も、こめ油商品に注力。[Jオイル]は今年2月、「こめ油たっぷりクッキングオイル」(900g/660円前後)を発売。こめ油大手の[築(つ)野(の)食品工業](和歌山)も2022年夏、主力商品「国産こめ油」(1500g/1166円)のパッケージを一新し、国産原料100%の訴求を強化。

 [ホクレン](北海道)の「北海道こめ油」(600g/609円)は、こめ油で国内初となる“機能性表示食品”を取得。それに伴い、パッケージも一新しました。

 ただ、順調に拡大を続けるこめ油市場にも課題はあります。お米の国内消費量が減っているため、原料となる国産米糠の生産量が減少し、調達コストが上昇傾向にあることです。

 使いやすさと健康面の二つが、こめ油の大きな持ち味。そこに、国産原料使用という安心・安全の裏付け要素が加味されて、さらなる強みが。

 一度使うとリピーター率が高いといわれるこめ油。今はまだ、他の食用油の2~3割ほどの市場規模にとどまっていますが、今後、“先輩たち”のように、食用油界の定番となるまで成長することができるか、期待を込めて注目です。

※参考:

農林水産省              https://www.maff.go.jp/

J-オイルミルズ            https://www.j-oil.com/

築野食品工業             https://www.tsuno.co.jp/

ホクレン農業協同組合連合会   https://www.hokuren.or.jp/

日本こめ油工業協同組合      https://www.nikkome.or.jp/

毎日新聞ネット版(2023年1月10日付)

日経МJ(2023年2月10日付)

 

■ドライバーの労働環境改善と引き換えに浮上する、「2024年問題」。

 “物流クライシス(危機)が迫る「2024年問題」”という声が日増しに大きくなってきています。労働時間の削減などを目指した『働き方改革関連法』(2019年)によって2024年4月以降、トラック・バス・タクシーなどのドライバーに対し、年間の時間外労働(残業)時間の上限が、現行の1176時間から960時間(月80時間)に規制されることになります。そのことにより、運送業の経営や物流システムに及ぼすさまざまな影響が想定されることから、“問題”と名付けられています。

 それでも、大型トラック運転手の労働時間は、全産業平均よりも2割ほど長く、残業時間で比較しても他業種の年間上限720時間と比べると、まだ240時間も多い計算になります。今回の上限規制に違反した事業者には、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科され、悪質な場合は厚労省から企業名の公表も。

 時間外労働の上限を設定し、ドライバーが長時間の残業をしなくてもいいように改善しようという狙いで今回の法改正が行われるわけですが、そこには、単純に諸手を挙げて歓迎することができない、二つの大きな問題が横たわっています。

 その一つは、運送業者の収益が減少する問題です。労働時間が少なくなって、一日に運べる荷物の量が減ることになるため、自ずと売り上げが下がります。それを避けるには運賃を上げざるを得なくなります。しかし約6万社を超える運送業者がひしめく過当競争の中、運賃を上げることは容易ではありません。荷主にしてみれば、より運賃の安い業者へ発注するのは当然のこと。加えて、今回の改正で、月60時間以上の残業が発生した場合の割増賃金率が、これまでの25%から50%へと引き上げられることから、人件費の大幅増を招き、経営の圧迫につながりかねません。

 二つ目は、労働時間の減少に比例してドライバーの収入が減少するという問題。走れば走るだけ収入となっていたドライバーにとっては、あてにしていた残業収入が入らなくなり、まさに死活問題。収入が低くなれば離職につながり、ドライバー不足に拍車がかかる恐れが。

 こうした“物流クライシス”に備え、国交省は検討会を発足させ、“物流の効率化”などの対応方針を提示。座長からは「配送料無料の広がりもあり、荷物を受け取る側は物流コストが見えていない。今はあまりにも物流に負荷のかかる仕組みになっている」との見解も。一方、荷主側の意識も変わり始めており、「将来はトラックの取り合いになる。その時に、荷主として選ばれる存在にならないといけない」と、ある種の危機感を募らせます。

 運送業界の長年の労働慣行を変えていくのは容易ではないでしょう。しかし、日本に住んでいる以上、誰もが無関係ではいられないこの問題。2024年の施行まで時間はわずか。効果的な対策はもとより、トラック事業者、荷主、そして荷物を配達してもらう消費者。三者三様の立場からの意識の改革こそが、今、求められています。

※参考:

厚生労働省             https://www.mhlw.go.jp/

(公社)全日本トラック協会    https://jta.or.jp/

国土交通省              https://www.mlit.go.jp/ 朝日新聞(2022年9月9日付/同12月14日付)