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お金の情報・まめ知識 2019/10/1

LDCレポート【10月号】

■製紙業界に追い風の“脱プラ”の動き。高まる「紙ストロー」の普及。

 海洋プラスチックごみによる汚染問題は、今年6月に開かれた「G20大阪サミット」の主要議題に上るほど世界の大きな関心事の一つとなっています。いまや、プラ製品の代替品への移行は世界規模のトレンドとなり、それはとりもなおさず関連企業にとっては千載一遇のチャンスといえます。とりわけ、脱プラの“標的”となったプラスチック製ストロー(以下、プラストロー)の代替品開発には、一層の拍車がかかります。

 年間60億本のプラストローを生産する「日本ストロー」では、昨年から本格的に紙製ストロー(以下、紙ストロー)の開発を開始、今秋にも商品化の予定です。当初、同社は紙ストローの生産には消極的でした。紙ストローは、3枚の紙を編み込み織り上げて加工するため、プラストローとは製法がまったく異なり、これまで培ったノウハウを活かすことが難しかったからです。紙独特の臭いや接着剤の臭いが残ること、そして倍以上にも跳ね上がる価格が課題でした。しかし同社は、紙と接着剤に国内産のものを使い、さらに独自の脱臭装置を開発することでこの問題をクリア。価格は、1本3~4円と、他社の紙ストローの半分以下に抑え、年間生産1000万本、国内40%のシェアを目指します。

 製紙大手の[日本製紙]は、今年4月から紙ストローの販売を始めています。紙の臭いや使っているうちにふやけてしまうといった紙ストローの弱点を独自の加工技術で克服。プラ製と遜色ない高品質な紙ストローで差別化を図ります。価格は、1本、約10円とプラ製の数倍。

 同じく製紙会社[北越コーポレーション]は、脱プラ意識の高い海外市場向けに、紙コップや紙ストロー用の原紙を輸出。2019年度は前年比2割増の見込みです。

 この“プラストロー離れ”を商機ととらえる関連メーカーは、自社の利益のためだけに技術力を行使するのではなく、技術を通して地球レベルの課題を解決しようという方向に舵を切っています。

 プラごみの量は、世界で年間およそ800万トン。そのうち、ストロー関連のものは1%にも及ばないごく僅かな量にすぎません。たしかに、ストローだけを紙で代替しても、プラごみ総量の減少にはつながらないという根本的な課題はあります。

より多く生産されているレジ袋やペットボトルなどに対する世界規模の規制や企業のさらなる取り組みはもちろんのこと、私たち消費者の環境意識の喚起が、いま求められています。

※参考:

日本ストロー          http://www.nipponstraw.com/

日本製紙            https://www.nipponpapergroup.com/

北越コーポレーション     http://www.hokuetsucorp.com/

日本経済新聞電子版(2019年4月8日付/同5月30日付/同6月26日付)

日経МJ(2019年7月1日付)

東洋経済オンライン(2019年7月28日付)

■学童保育にニューウエーブ。新規参入相次ぐ、「ネオ学童」市場。

 共働きやひとり親の子育て世帯にとって、仕事と育児の両立は喫緊の課題です。運良く保育園に預けることができ仕事を継続できていた親が、子どもが小学生になると放課後の預け先が確保できなくなり、共働きを諦めざるを得なくなる“小1の壁”と呼ばれる現実が親の前に立ちはだかります。こうした待機児童の受け皿として公立の「学童保育施設(学童)」がありますが、施設数の不足や保育時間・場所等の制約があって保護者のニーズをまかないきれていないのが現状。そこで最近では、民間事業者による受け皿づくりが加速して市場は拡大。高付加価値サービスを売りに、「ネオ学童」ともいうべきニューウエーブが押し寄せ、異業種からの参入も相次いでいます。

 ネオ学童-----これまでの預かり機能に、ピアノ・ダンス・絵画などの習い事や、宿題・英会話・プログラミングなどの学習塾機能をプラスした民間運営の学童サービスのことです。多くの施設は送迎付きで、預ける時間も公立より長く、延長も可。希望すれば夕食も食べられます。

 もちろん料金は高めで、公立の学童なら月数千円なのに対し、ネオ学童の月謝は5~6万円程度(週5日利用)。決して安くない金額ですが、それでも都市圏を中心にネオ学童を選ぶ保護者は増えています。預ける側としては、放課後にただ時間を過ごすだけの学童でいいのだろうかという不安・不満を感じていたところに登場したネオ学童。悩みの種だった“小1の壁”問題も解決する上に、習い事や塾のような学習指導が受けられる----一見、高額な料金も、別々に通わせた場合のコストを考えると、決して割高ではないという結論に達するようです。

 特徴あるネオ学童が続々と開設されています。

 日本語禁止、英語漬けの環境で子どもを預かる「キッズデュオ」(運営/スクールIE)、学習塾が経営母体の「アフタースクールワイズ」(運営/Z会HD)。文武両道がコンセプトの「キッズアフタースクール」(運営/ティップネス)は、水泳やバレエといった運動系だけでなく、英語・そろばん・工作などといった知育系のプログラムも充実。

ほかにも、[三菱地所]が国分寺市で学童施設併設のマンションを官民一体で開発、大手スーパー[イオン]の一部店舗では、店内に「イオン放課後教室」を開校、[京急グループ]が学習塾と組んで高架下スペースを学童に活用した「京急キッズファン」、系列会社のジャンボタクシーで送迎してくれる「Kippo」(運営/阪急阪神HD)、等々。

 せっかく預けるなら、子どもにプラスになる何かを学ばせたい、と願う親のニーズを追い風に、ネオ学童市場はさらに拡大の可能性を秘めています。

※参考:

キッズデュオ                  https://www.kidsduo.com/

アフタースクールワイズ           https://www.afterschool-wise.com/

ティップネス キッズアフタースクール   http://kids.tipness.co.jp/

三菱地所レジデンス             http://www.mec-r.com/

イオン放課後教室              https://www.aeonsportsclub.jp/

京急キッズファン               https://www.keikyu.co.jp/

Kippo                      https://afterschool-kippo.jp/

日経МJ(2019年4月5日付)

■クセがないのも個性です。“かけるオイル”が浸透して見事復活、「アマニ油」。

 ここ数年、食用油に対する健康価値の見直しを背景に、「アマニ油」や「エゴマ油」など、素材由来型といわれるヘルシーオイルへの注目度が高まり、テレビの健康情報番組などで再三にわたり紹介されたこともあって広く浸透、定着してきました。なかでも、とりわけ大きな伸びを見せているのが「アマニ油」です。

 注目される理由の一つが、アマニ油だけが持っている栄養素にあります。ヒトが体内で生成することができず、外から(食品)の摂取が必要となる“オメガ3脂肪酸”を豊富に含んでいる点です。ゴマ油やオリーブ油にはほとんど含まれていないこの成分は、魚に多く含まれていますが、現代の肉食化が進んだ日本人の食事では、よほど意識して魚を食べない限り摂取量は不足がちとなってしまいます。“アマニ効果”としては、アレルギー症状の緩和や血液をサラサラにして生活習慣病の予防、便秘改善。さらには、脳細胞を活性化させ認知症予防にも。また、代謝を促進させる働きがあるためダイエット効果や美肌効果などが期待されます。

 実は、右肩上がりで順調に推移してきたかに見えるアマニ油ですが、2015年に爆発的なブームが起きた後、2016、2017年と伸びは鈍り、市場は縮小に向かいました。価格がオリーブ油の5倍、サラダ油の20倍ほどすることも拡大の足かせの一因といわれています。しかし、エゴマ油、ココナツ油といった、一時脚光を浴びた食用油が軒並み大幅な落ち込みを見せるなか、アマニ油だけが盛り返したのです。

 2018年度で前年比60%超の伸びを見せ、国内出荷額は過去最高を更新しました。その背景には、売り場での地道な栄養素認知の努力、加えて商品開発と新たな摂取提案を抱き合わせたメーカーの取り組みがあります。

 加熱に弱く、炒め物や揚げ物には不向きのアマニ油は、味にクセがなく、そのまま生でいろいろな料理に合うのが特徴。サラダをはじめ、みそ汁や野菜ジュース、納豆、ヨーグルトなどに“かける”“あえる”といったドレッシング感覚での生使いが浸透してきたことも需要増に大きく貢献。若年層にも“アマニファン”の裾野が広がりました。

 “調理”するための油から“摂取”する油へ-----一度落ち込んだ食用油が、これだけ復活するのは珍しいといわれたアマニ油の、今後の動向が注目されます。

 ちなみに、アマニ油の摂取基準量は、一日1.6g~2.0g、およそ小さじ1杯程度です(厚労省)。

※参考:

厚生労働省         http://www.mhlw.go.jp/

食品産業新聞社ニュースWEB(2019年5月4日付)

日経МJ(2019年5月20日付)

日本食糧新聞(2019年6月17日付)